公園長ブログ 水無月―その壱

みなさん、こんにちは、公園長の瀧川です。

6月は雨の季節、みなさん雨はお好きですか。

6月の雨は命を輝かせる雨、本園でも、草むらにはナワシロイチゴのルビーのような粒が輝き、やまももの大ぶりの枝には、濃い緑の葉に抱かれるようにして、鮮やかな赤い果実が密生します。うめの実、りんごの若い果実、春に赤い花をひっそりとつけていたボケの実、そして、さまざまなハーブが新たな葉を伸ばし、それら、たくさんの命が、森や草むらで、ひっそりと、そして、ひそやかに薫る季節です。

のんほいパークの仲間たちにとっても6月は、初夏の味覚を楽しむ嬉しい季節です。みなさんは、飼育員がガサガサと草むらに分け入ったり、雨の中、森から赤い果実がついた枝を重そうに引きずって出てくる姿を見たことがありませんか。特にサル類やクマ類などの雑食性の仲間たちは、新鮮な果実が大好き、担当飼育員は、彼らのためにせっせせっせと、果実を集めます。

あたたかい雨の中で、一人たたずむのは、とても素敵な体験です。山小屋の乾いた部屋で、毛布をかぶって、雨の音と懐かしい友人とのひそひそ話を楽しむのもいいですが、一人テントの中で雨が降り続く静寂に身を置いたり、森の中でしっかりとした雨具に身を包んで、梢から滴り落ちるしずくの音や、姿の見えない鳥たちの声、苔むした地面に雨がしみこむ気配を感じるのは、なによりも心が落ち着くものです。

動物園に職場が変わって間もない頃、サルデッキで、ぼーと考えごとをしていたことがあります。やがて、雨が、サーとまわりの音をかき消すように降り始め、サルデッキの屋根の下でテナガザルのピッピと二人きりになって、ただただ、お互いに見つめあっていました。二人だけの時間が流れ、やがて、心と心がつながったような気がしたその時、悩んでいた心がすうっと楽になったのを覚えています。

今でも、雨が降り始めたり、遠い森からピッピの歌声が聞こえたりすると、サルデッキに行って一人たたずむ自分を想います。

6月は命を輝かせる雨、そして、豊かな時間を与えてくれる雨です。

 

 

 

 

 

 

 

 

「サルデッキにて」

 

 

暖かい雨が

静かに

動物園の森を包んでいく

 

記憶はいつもそうだった

雨は

こんなにも貴重な空間で

そこには

新緑に滴る木々の、深く静かな呼吸に

溶け去ってしまいそうな意識と

すこしばかりの、甘い孤独があった

 

そして、そんなとき

動物園は

閉ざされた心のものだ

 

風景が震え

想いがつながり

 

やがて

ガラス越しに見つめあう瞳の中で

お互いが癒されていく

 

 

 

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